裁判官はオワコンか?

弁護士はオワコンである、というのが当ブログの基本的スタンスです。

もちろん異論はあるでしょうが、あくまで一弁護士として個人的な意見を述べているだけなので悪しからず。

 

では、弁護士と並んで法律職のひとつ、裁判官はオワコンなのでしょうか?

仕事内容、将来性、収入といった観点からみていきたいと思います。

 

まず、裁判官の仕事内容はまさしく裁判を進行させ、和解・判決といった形で裁判を終わらせていくことです。

ただ、裁判官の中には裁判所の人事といった裁判所行政に携わる人や、司法修習の教官についている人もいます。

また、東京・大阪といった大都市の裁判には知財部のような特殊な訴訟や大企業同士の裁判もあります。

もっとも裁判官のうち多くは交通事故、離婚といった似たような事件を担当しています。

この点では弁護士の扱っている仕事とたいして違いはありません(なお、弁護士には裁判以外に交渉等裁判外の業務が加わります)。

しかし、裁判官は裁判を進行させる仕事が主であり、そこに顕れる裁判資料には弁護士というフィルターが加わります。そのため、紛争を抱えた当事者の相手をしなくて済む、という点では弁護士の仕事よりも負担が少ないでしょう。弁護士の仕事の何がしんどいかといえば、常識のない依頼者や、自分の考えが正しいと信じ込みそれを弁護士に押し付けてくる依頼者の相手をすることなのです。

また、裁判官は紛争のどちらかの立場に立つわけではないため、自らの意見・信条に基づき判断できる点でも自由です。これが弁護士や検察官になれば、必ずどちらかの立場に立たねばならず、明らかに無理な依頼者の言い分を前提に仕事をしなければならなかったり、負けた場合に依頼者から責任追及をされるおそれもあります。

裁判官の抱えるストレスは、書類の提出期限を守らない、事件の筋を見通すことができない、といった徒らに裁判を泥沼化させる出来の悪い弁護士の存在が一定数いることが大きいといいます。

こういったストレスや、地方の裁判は似たような案件ばかりであり退屈である、という点を考えれば、裁判官の仕事もさして面白みがある、とは言えないでしょう。

もっとも、裁判官には定期的に転勤があるため、生活に張り合いは出てくるのではないでしょうか。転勤すれば抱えている面倒な案件からも解放されます。さらには、裁判官になって数年経てば他業種経験制度や留学制度があるので、この点でも裁判官は恵まれていると言えるでしょう。

 

次に、将来性について検討すると、そもそも公務員であるため、裁判官の仕事が将来なくなることはないでしょう。

また、司法制度改革によって司法試験合格者は大幅に増加しましたが、裁判官の採用人数はきちんと需要に見合った数に制限されているため、需給バランスに不均衡もありません。

そもそも、憲法身分保障がなされているので、よほどのことがなければクビになることもないのです。

従って、裁判官の仕事は将来性がないということはないでしょう。

むしろ、国際取引の増加等によって新たな裁判制度・紛争解決制度が生まれれば、そこに裁判官の仕事の幅が増えるかもしれません。

裁判官に就くことさえできれば、需給バランスが完全に崩壊した弁護士とは異なり安定した将来を歩めるでしょう。もちろん、日本の裁判所は官僚組織であるため、そこでの息苦しさや判決が全国民の批判に晒される、という意味では負担はあるでしょうが、裁判官の安定した将来性は何者にも勝るメリットといえるはないでしょうか。

 

最後に、裁判官の収入についてみていきます。

まず、裁判官の平均年収は928万円、とされています。ただし、年功序列で勤続年数・階級によって増加していくので、初年度の給与は22万7000円と弁護士に比べればかなり少ないのですが、そこから安定して昇給していきます。普通にいけば退職時には年収1500万円〜2000万円、退職金も5000万円を超えている人が多いようです。さらに国家公務員の扱いであるため、住宅補助といった福利厚生も最強でしょう。裁判官は夏季休暇といって、7月から9月までの間で2週間〜3週間の休みをとることができるのです。普通の企業はもちろん、公務員ですらそのように長い期間の休みをとることのできる仕事はないでしょう。

過去には裁判所の中にはテニスコートが設置されており、裁判官は休み時間にテニスを嗜んでいたこともあるのです。いまではそういった裁判所はほとんどないと思いますが。

 

以上、仕事内容、安定した将来性、公務員にしては恵まれた高収入・福利厚生を考えれば、裁判官はオワコンではありません。少なくとも業界全体が沈没している弁護士に比べれば。

 

しかし、裁判官になるのは司法試験合格者のうち一握りです。いつか裁判官になる方法も書いてみたいと思います。